鎌倉のラーメン その1~ひら乃~
鎌倉でラーメンと言えば、小町通りに入ってすぐの場所にある「ひら乃」が真っ先に思い浮かぶ。
店の前には常に行列があり、観光客に好奇の目でみられながら並ぶのはとても恥ずかしい、そんな思いを何度も経験した。
ただ、この店を特徴づけるこの風景も最近変わってきたような気がする。
私が鎌倉住人になってから行列をみなくなった。
住人になる前は休日にしかこの店に来られなかったので、混んでいるときの様子しか知らなかったせいかもしれないけれど。
どんな繁盛店でも、その隆盛が永遠に続くことなんてありはしない。
特にラーメン店では、「老舗」という表現は必ずしも褒め言葉ではない。
近年ラーメンブームと言われ、新しい店が続々と現れ、そして消えていく状況では、「老舗」は安心感とともに古くさいイメージを与えてしまう。
店や従業員が古くさいのは、それは店の雰囲気であって、趣があるとも風格とも言われて、店の長所にもなりえよう。
ただ、味が古くさいには、例え味が落ちていなくても、「昔はやったタイプ」、「はやり始めた頃と味がほとんど変わっていない」など負のイメージしか想像できない。
「昔ながらの味」と「昔のままの味」とでは意味が違う。
ひとの好みは変わっていくし、舌は進化していく(正確には要求レベルが高まる)ものだ。
時代時代の客の好みに合わせなければ、いくら繁盛店でも衰退の憂き目にあいかねない。
普遍的、絶対的にうまい「味」など存在しないから。
私にとっては「老舗」のひら乃。
いろいろと妄想しながら、久しぶりに暖簾をくぐる。
店は相変わらずうなぎの寝床だ。
カウンタ席だけで、どんなに他の客が椅子を引いてくれても、体がぶつかってしまうのはいつものこと。
そして、店主も変わらない。
もう60歳を超えただろうか、見た目はちょっとニヒルで寡黙そうなおじさん、でも接客態度はとても丁寧で親切。
今日は味噌ラーメンを注文、連れはワカメラーメン。
ワカメラーメンのスープは、豚骨・鶏がらベースの澄んだ醤油。昆布も多く使われている。
今どきの濃厚なだしではなく、化学調味料のうまみが多少気になる。
麺は、昔と変わっていなければ邦栄堂製麺製、太さも加水度合いも普通の縮れ麺。
具は、チャーシューとメンマともやし。
味噌ラーメンの味噌は業務用のものだろうか?
ありがちな感じで味が強く、この味噌だとスープのだしの工夫は無用か?などと乱暴なことを考えてしまう。
残念ながら味は「昔のまま」に感じる。
まずくはないが、要求レベルの高まった舌が物足りなさを訴えている。
これだけのラーメンブームにありながら、鎌倉はその風潮に無縁だ。
私のことをラーメン好きと知っている知り合いに鎌倉駅付近でうまい店を教えてといわれても、ひなどりを除けば、10年来紹介する店が変わらない。
ひら乃の他には、その2で取り上げる予定の静雨庵と薊くらい。
いくら頭をひねってもそれ以上の店はでてこない。
競合店の少なさがひら乃に追い風になっている、とまでは思いたくない。
まあ、店の繁盛度合いは「味」だけで決まるものではないけれども。
帰り道、連れに向かって、
「ワカメはスープの風味のじゃまになるから、気の利く店じゃ具にしないんだよね~」
とワカメラーメンを注文したことを軽く非難してみた。
評論家ぶってラーメンを語ることのバカバカさに気づいて、ラーメンのHPをやめたんじゃなかったっけ?と思い出しながら苦笑した。
さらに、ラーメン専門ページじゃないものの、また偉そうにラーメンを語っている。
歴史は繰り返す。私も例外じゃない。
「ひら乃」
住所:鎌倉市小町1-6-13
営業:11~20:30?
定休日:火
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